龍之城
アマツとコンロンの発見を始めとし、冒険家たちの新大陸に対する関心はますます深くなっていった。
未知の世界との交流は、冒険家たちの富と名誉、さらに新たな知識に対する欲求を燃やすきっかけとなった。冒険家たちの欲求は海を渡り世界各地に伸びてゆき、その中で壮大な建造物がそびえる古都「龍之城」を発見するに至る。
龍之城には、大陸のシュバルツバルド共和国にも劣らぬ古代の遺物が隠されているという噂のとおり、今までに見たことのない文化や発明品が存在し、それは冒険家たちの心を大きく捕らえた。
しかし、アマツやコンロンとは違い、龍之城周辺の住民は自分たちの文化を守ろうと、異国の人間を排斥する傾向が強かった。
皇帝の親政下である龍之城には「官」と「武林」という存在がある。政治の上では官が民を治めているものの、実際に民と身近な関係を持っているのは武林であった。民にとって武林とは遠い存在ではなく、身近な「拳法」そのものだったからだろう。
一方、拳法を使う者たちの中から多くの門派が派生し、いたる拠点を押さえてきた。そして、一つの巨大な勢力となっていった。
彼らは官とは違い、民から税を取ることはせず、独立した生活をしていたため、官とも武林とも衝突することはなく共存していた。
古い歴史を持つ龍之城は、40年ほど前まで民が屋外を出歩けないほどモンスターの襲撃が頻繁にあった。その時現われた侠客「バイロン」が、武林たちと力をあわせてモンスターの襲撃を阻止し、その功績が称えられてバイロンは龍之城の太守の座についた。
かし歳月が経ちバイロンが老いると、太守の座を狙った武林たちの間で争いが起きた。その混乱をついてか、それまで静かだったモンスターが再び町を襲撃するようになったため、太守は国外の冒険者たちを非公式ではあるが受け入れるようになった。
国外の文明を以ってモンスターを討伐する冒険者たちを、龍之城の民は歓迎していたが、古き伝統を守り続ける名家の人々や武林たちは、自分たちの仕事に干渉する異国の人間を良い目では見ていないという。