■ Anniversary Special Story 〜White Snow Bells〜
トップ プロローグ 第一話 第二話 そして… エピローグ

異界での戦いは予想を遥かに上回り、困難を極めました。



オルトラットたち救出隊は、倒れているシィルティーナを見つけ、どうにか活路を開き、
シィルティーナを囲うように防御の布陣を作り、オルトラットがシィルティーナを抱き起こしました。

「おい!シィルティーナ!しっかりしろ!」

その声に答えるようにシィルティーナはゆっくりと目を開け始めました。
ぼんやりと自分を抱いている青年の姿が目に入りました。

「俺だ!オルトラットだ!また転んで頭でも打ったのか?」

「あれ……お兄ちゃん……どうして?」

シィルティーナは彼のことを片時も忘れたことはありませんでした。
いつも雪道で転ぶシィルティーナを優しく起こしてくれるお兄さんのような存在。
姉以外で唯一親しかった彼は、シィルティーナの初恋の相手でもありました。

今の状況を考える間もなく、ただ本能的にシィルティーナはオルトラットの胸に顔をうずめました。
自然と涙が溢れ出し、オルトラットを抱きしめる力も強くなりました。
以前ならオルトラットは、転んでも泣かないって言っただろ?とか、
シィルティーナをからかったりするのですが、
この時ばかりは黙って、シィルティーナの頭を撫でながら泣き止むのを待ちました。

いつもそばにいてくれた……
シィルティーナに悲しいことがあると、口ではからかいながらもギュッと抱きしめて、
頭を撫でていてくれたのです。
オルトラットの優しさに触れ、我を取り戻したシィルティーナはふと気がつきます。

「……あれ、あの石は?」

キョロキョロと辺りを見渡すと、闇輝石はシィルティーナから離れた位置で鈍い光を放ちながら、
モンスターを吐き出していました。

「やっぱりあいつが原因か……何とか止めなければいけないな」

険しい表情のオルトラットを見たシィルティーナは、けげんそうな顔をしてオルトラットに言いました。

← 戻る 12 ページ 進む →

閉じる