| 異界での戦いは予想を遥かに上回り、困難を極めました。 
 オルトラットたち救出隊は、倒れているシィルティーナを見つけ、どうにか活路を開き、
 シィルティーナを囲うように防御の布陣を作り、オルトラットがシィルティーナを抱き起こしました。
 
 「おい!シィルティーナ!しっかりしろ!」
 
 その声に答えるようにシィルティーナはゆっくりと目を開け始めました。
 ぼんやりと自分を抱いている青年の姿が目に入りました。
 
 「俺だ!オルトラットだ!また転んで頭でも打ったのか?」
 
 「あれ……お兄ちゃん……どうして?」
 
 シィルティーナは彼のことを片時も忘れたことはありませんでした。
 いつも雪道で転ぶシィルティーナを優しく起こしてくれるお兄さんのような存在。
 姉以外で唯一親しかった彼は、シィルティーナの初恋の相手でもありました。
 
 今の状況を考える間もなく、ただ本能的にシィルティーナはオルトラットの胸に顔をうずめました。
 自然と涙が溢れ出し、オルトラットを抱きしめる力も強くなりました。
 以前ならオルトラットは、転んでも泣かないって言っただろ?とか、
 シィルティーナをからかったりするのですが、
 この時ばかりは黙って、シィルティーナの頭を撫でながら泣き止むのを待ちました。
 
 いつもそばにいてくれた……
 シィルティーナに悲しいことがあると、口ではからかいながらもギュッと抱きしめて、
 頭を撫でていてくれたのです。
 オルトラットの優しさに触れ、我を取り戻したシィルティーナはふと気がつきます。
 
 「……あれ、あの石は?」
 
 キョロキョロと辺りを見渡すと、闇輝石はシィルティーナから離れた位置で鈍い光を放ちながら、
 モンスターを吐き出していました。
 
 「やっぱりあいつが原因か……何とか止めなければいけないな」
 
 険しい表情のオルトラットを見たシィルティーナは、けげんそうな顔をしてオルトラットに言いました。
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