【第二話】
「うぐっ!おのれ、貴様が元凶か!!」
「なんだ!このファミリアーの大群は!!」
「おい、どうやらそこの娘が召喚しているようだ!!」
1匹1匹では弱いファミリアーも、大群となれば話は別のようです。
熟練した冒険者達でも苦戦を強いられました。
ようやくファミリアーが全て倒された頃には、多くの負傷者が出てしまったのです。
「あ……あの……」
冒険者達の冷たい視線がシィルティーナへ注がれます。
姉は紫色の石から召喚されたファミリアーに瀕死の重傷を負わされ、
今はもうシィルティーナに救いの手を差し伸べてくれる人はいません。
冒険者達の鋭い眼光に圧倒されたシィルティーナは、
最早まともに会話することも許されない状況になって
しまい、シィルティーナは苦しくて、辛くて、どうしたら
良いかわからなくなり、その場から走り出しました。
「あの小娘が逃げたぞ!みんな追え!」
今にも泣きそうな顔で走り回るシィルティーナを、
冒険者達が容赦なく責め立てます。
四方を囲まれたシィルティーナは立ち止まり、
「なんで……こんなことになっちゃったの……
こんなのやだよ!」
シィルティーナの叫びと共に、
紫色の石は唸りを上げて輝き出しました。
今までにない光にシィルティーナは思わず目を瞑ってしまい、
収まったと同時にゆっくりと目を開くと、
見たこともない巨大なモンスターが、シィルティーナの両脇に現れたのです。
「あ……あわ……ああ……ぁ」
シィルティーナは泣きながら逃げました。
ひたすら何処へ逃げているのかもわからず逃げました。
心の中でココから逃げたい、そう呟いた瞬間。
再び紫色の石は輝きを増し、その光は大きな球体となり、シィルティーナの体を丸ごと包みこみました。
そして、シィルティーナの体を包み込んだ光は、彼女の体へとドンドン集束して行き、
全てが吸い込まれると、カッというまばゆい光と共に何処かへと消えて行ったのでした。
その光に目を瞑ってしまった冒険者たちが、再び目を開いた時、先ほどまでシィルティーナが居た場所に、
どんよりとした丸くて黒い空間がゆらゆらと存在していました。
なんとそれは、異界への扉だったのです。 |