| 【第一話】 
  ここは一年中雪が降り積もる街ルティエ。
 
 この街に聖職者の姉妹が住んでいました。
 
 才能と知恵にたけ、誰からも尊敬を受ける姉。
 『ピアリィ・エアハルト』
 
 奇跡を起こす才能が皆無。
 得意なことは雪道で転ぶこと。
 『シィルティーナ・エアハルト』
 
 二人は街中でも噂になる程の仲の良い姉妹です。
 ですが、別の意味でも二人はとても有名な姉妹なのでした。
 
 姉は才色兼備で様々な力を使いこなし、プリーストとしては一目置かれる存在です。
 それとは対照的に、妹のシィルティーナはどんなに祈ろうとも奇跡の力が具現化しません。
 雪道ではすぐ転ぶといった、まさにドジで有名な子でした。
 
 ドサッ!!
 
 「あいたた……いたいよぉ……」
 
 シィルティーナは思い切り何もないところで転んでしまいました。
 
 涙目になりながらも立ち上がり、のんきに歩いているサスカッチの方へと近づいて行きます。
 
 歩きながらシィルティーナはほんの少しだけ、昔の話を思い出しました。
 
 妹のシィルティーナは悩んでいました。
 いつも転んだ時に自分へヒールを詠唱しようとしても、
 物凄い詠唱速度で姉が妹へヒールをかけてしまいます。
 そんな姉はいつも、
 
 「シィルティーナ大丈夫?手繋いで歩こうか?」
 
 そんな風に妹を気遣っています。
 そんな状況が幼い頃から続いています。
 
 妹のシィルティーナは姉に感謝していました。
 しかし同時に、
 『私は姉の足を引っ張っているだけなのではないか』と、『本当は姉も私以外の友達と遊んだりしたいのに、
 私がドジなばっかりに心配で連れ添ってくれているのではないか』と、いつも不安に思っていました。
 |