| ふと我に返り…… 
 「そろそろ一人前になって、お姉ちゃんに気を遣わせないようにしないと!」
 
 そう思ったシィルティーナは、姉には内緒で毎日欠かさず修行をしていました。
 今日も街の外に出て、サスカッチ相手にホーリーライトの練習をしていたのでした。
 
 「……よし!!いくぞぉ〜……ホーリーライト!!」
 
 そこにはサスカッチに手をかざし、呆然と立ち尽くすシィルティーナの姿があります。
 いつもと変わらず静かなルティエフィールドには、
 ザッザッとサスカッチが歩く音がかすかに聞こえるだけです。
 
 “詠唱に失敗しました。”
 
 「うぅ……ホーリーライト!ホーリーライト!!……ふぇっ」
 
 何度も何度も詠唱しますが奇跡の力は発動しません。
 
 「うぅ……なんでできないの……ホーリーライトって叫んでいるはずなのに……」
 
 「お姉ちゃんはマグヌスエキュマ?なんとかも使えるのに……」
 
 そんなシィルティーナを馬鹿にするように
 
  「フゴッフ、フゴフゴ、フゴッフ」
 
 サスカッチもまるで笑っているような声を上げ、
 未熟なアコライトの前で鼻をほじる始末。
 
 「うぅ……こいつめぇ!」
 
 シィルティーナはそんなサスカッチの態度が許せず、
 地面にあった雪を両手ですくい上げ、
 ギュッギュッと丸くしてからサスカッチに投げつけました。
 しかし、投げた雪球はサスカッチには当たらず、
 見当違いの方向へと飛んでいってしまいました。
 
 「フーゴフゴフゴフゴッ」
 
 サスカッチは大声をあげて、シィルティーナとは反対方向に振り返り、
 ゆっくりと雪の霧の中を歩きだしました。
 |