| 「なんで……なんでなのっ!」 
 シィルティーナは泣きじゃくりながらそう叫びました。
 とっさに雪を掴み、サスカッチに向かって一心不乱に何度も投げ続けますが、
 球にもなっていない雪は風と共にまた地面へと戻っていくのでした。
 
 「……もう今日は帰ろう、お姉ちゃんにまた心配をかけちゃうし……」
 
  ルティエに帰ろうと思ったその時でした。
 
 「ぅ……ぅぅ……」
 
 雪球が飛んでいった方向からうなり声が聞こえました。
 ゆっくりと近づいて行くと……。
 誰かが倒れていて、かなり雪を被っていました。
 しかも、良く見るとその人は大怪我をしています。
 
 「うわっ!……おね……」
 
 目の前の状況を見て混乱してしまい、
 ついつい姉を呼ぼうとしましたが、今は姉がいないことを思い出しました。
 ここは私がやらなくちゃ!と言いながらヒールを詠唱し始めました。
 
 「ヒール!」
 
 シィルティーナ渾身のヒールでしたが、その思いまでも神は見捨てたのか、
 案の定発動せず途方に暮れてしまいました。
 
 「って、落ち込んでいる場合じゃない!」
 
 自らに突っ込みを入れ、気を取り直しました。
 シィルティーナは倒れている人に声をかけましたが反応はありません。
 少し悩みましたが、まずその身に掛かっている雪を払い落としました。
 
 綺麗に払い終わるとその中からは一人の男が顔を出しました。
 うぅ……と唸っています。とても苦しそうです。
 再び大きな声で男の体を揺り動かしながら、
 
 「おじさん起きて!このままじゃ死んじゃうよ!」
 
 すると男はゆっくりと目を開きました。
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