「あんたの妹さんが持っている、厄介な石は間違いなく『闇輝石』だろう」
ボールクはそう言いました。
ピアリィとボールクが出会い、ボールクと冒険者たちの間で話し合いが行われていました。
モンスターを召喚することができる紫色の石について……、
そして消えたシィルティーナについて、ボールクが話しはじめました。
「闇輝石は持ち主の『負の感情』を感じ取ると同時に、
その力を発揮するという石だ。
石が持ち主の『恐怖』を感じ取ると、モンスターを
召喚して恐怖から守るという能力があるらしい。
実際のところ守るという意味で石が反応しているか
どうかはわからない。
もしかしたら別の理由があるのかもな。
そして『逃げたい』という意思を感じ取れば、
石は異界への扉を開き、持ち主が逃げるための
手助けをしてくれるらしい」
すると冒険者たちは頭を捻りながら
ボールクに質問しました。
「じゃあ、この騒動はシィルティーナが何らかの負の感情を抱いたがために、
引き起こされたことなのかい?」
「単純に考えればそうなるだろうな……。
いずれにせよ、何故闇輝石なんて物騒なものを、シィルティーナが持っていたのかは、
本人に聞いてみなければわからんさ。
まぁ恐らく、最初にピアリィを襲ったファミリアーは彼女の苦手なモンスターみたいだし、
シィルティーナのピアリィに対する何かしらの思いが反応して、形となって現れたのだろうな。
残念ながらその思いの力で、冒険者や住民たちに被害が及び、
彼らはその力を使ったシィルティーナに矛先を向けてしまった。
そして今度は彼らから逃げたいという思いが、闇輝石が反応して彼女を異界へと逃がした。
とにかく、これからは慎重に行動しなければならない」
全てを聞いたピアリィはゆっくりと口を開きました。
「ボールクさん、シィルティーナは今どこにいるのですか?」
「伝聞が正しいとすれば、先ほども述べたように、
異界という場所にいるはずだ。異界への入り口は複数存在しないはず、
闇輝石の力が極限まで高まることによって生まれる、歪みのようなものだからな。
しかし……異界は我々の住む環境とは大きく違うはずだ。
それに、入ることができたとしても、生きて帰れる保証はないだろう」
ボールクの言葉に反応したピアリィは、
「そんな危険なところにあの子は今一人かもしれない……。
一刻も早く助けに行かなくては……!」
「気持ちはわかるが少し冷静になるんだお嬢さん。
異界の中には我々が知らない未知の存在がいるかもしれない。
まずは勇士を募って、万全の準備をしてから旅立たねばあんたの身も危険だ」
シィルティーナを異界に送ることで、彼女を襲った冒険者達からその身を護った闇輝石。
しかし、それは同時に、シィルティーナの身を危険に晒すことにもなっていたのでした。
冒険者から勇敢な者を募り、シィルティーナ救出のため、彼らは異界へと旅立つことになりました。
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