| 歩いてきた方向を振り返ると物凄い雪煙をあげながら、 ペコペコに騎乗している騎士達がドドドドドッと走ってきて、
 シィルティーナの近くまで来ると、止まれー!!という大きな声と共に、
 集団はその場に停止しました。
 
 「おい、そこの娘。怪我をしている怪しい男を見なかったか?」
 
  ペコペコの騎士達の中で一番豪華な鎧を身に着けている男が、険しい表情で話しかけてきました。
 
 「あ、はい……さっき見ました」
 
 「おお、やはりこちらに逃げてきていたか!」
 
 逃げてという言葉に少し戸惑いを感じましたが、そこは押し殺して、さっき起こったことを説明しようとした矢先に、
 
 「礼を言うぞ!皆の者この近辺を探せ!」
 
 そう言い残すとペコペコに乗った騎士達たちは、
 ドドドドドッと別の方向へと雪煙をあげながら去って行きました。
 
 「それで……さっき変な石を拾ったのです……ってあれ」
 
 ポーチから拾った紫色の石を取り出し見せようとしたのですが、
 あまりにもシィルティーナの反応が遅いため、
 騎士達はもうとっくに目の前から消えていました。
 
 「はぁ……本当にダメな子……早く帰ろう」
 
 ふと、手に持っている石をゆっくり見つめて、
 石の中に渦巻いている、紫と黒とが入り混じった色に身震いしました。
 
 「良く見るとこの石ってとても不吉な感じがする……怖いな」
 
 ポーチに紫の石をしまうと、再びさっきより少しだけ強い光を放ちました。
 ですが、やはりシィルティーナはそれに気づいていません。
 シィルティーナはため息を交えながら、ルティエへと歩き出しました。
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