――シュバルツバルド共和国の首都ジュノー。 
                  そこでは、『蜃気楼の塔』の調査を行った一人である『スノート・フラール』を中心に、 
                  前回の結果を元に、次の内部調査に向けての準備が行われていた。 
                    
                  現在、判明しているのは、 
                  『蜃気楼の塔』の建築構造が古代都市ジュピロスの技術に酷似しており、 
                  かつて人が生活していたと思われること、 
                  そして、塔内部で何か大きな事故が発生していたということである。 
                  その後の研究によって、用途が判明した装置や、 
                  新たな階層へつながる入り口があるらしいことが判ったため、 
                  学者達は、再び『蜃気楼の塔』へ行くことを心待ちにしていた。 
                    そんな彼らの期待を汲み取ったかのように、 
                      『蜃気楼の塔』は、再びミッドガルドに生きるすべての者の前に姿を現した。 
                      この出現は偶然か、それとも多くの謎を解明しようとする者を嘲笑う塔自身の意思なのであろうか……。 
                   前回、ソグラト砂漠に出現した『蜃気楼の塔』。 
                    今回も同様の場所に出現すると思われていた塔は、 
                    ソグラト砂漠だけでなく、別の三ヶ所にも姿を見せた。 
                    なんと『蜃気楼の塔』は、四つの場所に出現したのである。 
                  それを聞いた学者達の受けた衝撃は大きかった。 
                    今回、彼らが万全を尽くして準備していたのは、 
                    あくまで一つの塔を調査することを想定したものである。 
                    それを、急遽、四つに分け、各塔ごとに調査を行ったとして、 
                    果たして満足のいく結果を出せるのだろうか……。 
                    行き先の不安に包まれる学者達、しかし、スノートだけは違っていた。 
                  未だ誰も知らない謎の上に、さらに新しい謎が積み上げられる。 
                    それは、探究心の塊である学者にとって、 
                    追い続けるに相応しい挑戦状だ。 
                  スノートの理知の瞳に光が宿る。 
                    彼女は尻込みする学者達を奮い立たせて、 
                    再び冒険者の協力を得るために動き始めた。 
                  結成された調査団が向かうのは、挑戦者を危険と犠牲によって拒み続けながら、 
                    その身に多くの謎を秘め、"知の象徴"なる遺産を持つといわれる『蜃気楼の塔』。 
                    人々の思惑が錯綜する、その瞬間でさえ塔は何も語ることなく、天へとのびていた。  |