第五話続き
『ジャン』と『シャルロット』は、親の理解を得られぬまま
駆け落ちをした恋人同士でした。
しかし『今のままで十分』という『ジャン』、
『父の理解を得て皆に祝福されたい』という『シャルロット』……
考え方の違いから二人の主張は次第に口論へと発展します。
そこへ現れた冒険者は『ジャン』と『シャルロット』の話を聞き、
自らが彼女の父『リュシアン』のもとを訪れることを提案し、
その場を収めます。
なんとか『リュシアン』に会うことができた冒険者ですが、
そこで『リュシアン』から婚約を反対した理由を聞きます。
『二人が愛し合いお互いを想っているのであれば、何が何でも、 認めてもらおうと食らいついてくるはずだ。 だが駆け落ちしたあの夜、ジャンは自らの想いを優先しシャルロットを惑わし 駆け落ちをするように仕向けたという。 それでは、愛する娘を託すには少々不安が残るのだよ』
『リュシアン』の言い分はもっともでしたが、
冒険者は二人のために必死に食い下がり『ジャン』に
もう一度チャンスを与えるように頼みこみました。
冒険者が彼らのもとへもどり『ジャン』に婚約を反対された理由を話すと、『ジャン』も
『リュシアン』の真意を知り、 試練に臨みます。
試練は、ミノタウロスの精鋭たちが放つ猛攻に耐え抜くというものでした。
『ジャン』はその一撃一撃を、冒険者の指示でなんとか凌ぎ続けましたが、
試練開始から休みなく『ジャン』に向かって八方から襲い掛かるミノタウロスの精鋭達。
ついに、体力の限界を超え、無情にも膝から崩れ落ちる『ジャン』
『ジャン』の視界が意識もろともに暗闇へと落ちていく中……
駆け寄る『シャルロット』の姿が『ジャン』の視界に映ります。
『シャルロット……ただ……ただ、君のためだけに、僕はっ!!!!』
『ジャン』が気力のみでその場に奮い立ったとき、
試練終了の合図が鳴り響きます。
試練を乗り越え『リュシアン』からも婚約を認められた『ジャン』と『シャルロット』はミョルニール山脈で誓いを交し合います。
『シャルロット、僕は弱いし頼りない、その上自分の気持ちばかり優先していた嫌なやつだ…… けれどこれからは、かけがえの無い君のために生きたいと思う』
『ジャン……私だって貴方と同じ、貴方を愛していると言いながら貴方のために何かをしてあげられたわけじゃなかった……
私も、これからは貴方のために生きていくわ』
『シャルロット、ありがとう。今日が僕たちにとって、
本当の「はじまり」かもね!』
「愛情」
それはかけがえのない相手のため、見返りを求めず、ただ相手を純粋に想う尊い心。 この心は人間もモンスターも関係なく、全ての生ある者の営みに必要な心なのだろう。