季節がひと巡りし、春がやってきました。
春の到来に喜ぶ人々。
アマツでも毎年恒例の春祭りが行われようとしています。
着々と準備が進む中、物憂げな表情をする者がひとり。
「はぁ……何もやる気が起きない」
アマツの火の神様、ヒノカグツチでした。
「何かこう……ワシの魂を燃え上がらせるような、血沸き肉躍るような話はないのか」
そう呟くヒノカグツチに、ひとりの男が声をかけます。
「ヒノカグツチの旦那よ。じゃあ、俺の旅の話でも聞いてみるかい?」
声をかけたのは、ヒノカグツチを祭る神社の息子、五郎でした。
五郎の冒険譚を聞いたヒノカグツチの目は、みるみるうちに輝きを取り戻します。
「これは面白い! 五郎よ、もっと聞かせてはくれないか」
しかし、五郎にはそれ以上の話はありません。
そこで五郎は、春祭りにやってくる冒険者たちに冒険譚を語ってもらうのはどうかと提案しました。それにはヒノカグツチも名案だと、大歓迎!
「では、我に冒険譚を聞かせてくれた冒険者には、加護を与えることにしよう」
こうして、冒険者たちから話を聞くべく、アマツの春祭りにヒノカグツチがやってきたのでした。