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そんなことない、と声を掛けたかったマトルチェでしたが、
すっかり落ち込んでしまっているサフィレナに何も言えませんでした。
マトルチェはしばらくそっとしてあげようと思い、
一人家を出ることにしました。 |
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(サフィレナはおとなしいっていうか、後ろ向きというか……
元気になってもらうにはどうしたらいいかなあ……) |
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裏通りを歩いていると冒険者たちの話し声がマトルチェの耳に届きました。
どうやら、とても高嶺の花である女性に告白したという話のようです。
「――でさ、昨日その女性に思い切って告白してみたんだ!
……結果はダメだったけど」
「そう……振られちゃったんだ」
「うん。まあ、でも気持ちの区切りはつけられたし、後悔はしてないよ」
「あんた、そういうとこ前向きだよねぇ」
(……前向き)
「……」

「それだ!! ありがとう!!」
そう叫び冒険者と握手を交わすマトルチェ。
唖然とする冒険者たちを尻目に何処かへと走り去ってしまいました。
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